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ピンチの時に助けてくれる人

「ピンチの時に助けてくれる人になってね」
子供のころ、幼なじみのアズサちゃんはそう言っていた。僕たちはあるヒーロー番組が大好きだった。ヒロインのピンチに颯爽と現れて悪を蹴散らすヒーローが堪らなくかっこいい番組だった。
僕は間違いなく無敵のヒーローに自分を重ね合わせていたが、アズサちゃんはヒロインに自分を見ていたようだった。まだ、男女の性差が露骨に出始める前の幼少期だったが、その頃から僕は「守るヒーロー」であり、アズサちゃんは「守られるヒロイン」を自覚していたのだ。
こうして、僕たちはともに成長して大人になった。さすがにヒーロー番組からは卒業していたが、気持ちはあの頃から変わっていなかった。
僕はそのヒーロー番組を見て、純粋に「ピンチの時に助けてくれる人」になりたいと思った。そんな人間になるには心身ともに強くならなくてはならない。中学高校と柔道で体を鍛えてきた僕が、仕事として警察官を志した根底には、幼少の頃のそんな記憶があるはずだ。
一方のアズサちゃんは「ピンチの時に助けてもらえる人」に目覚めたのだと思う。助けてもらうには弱くなくてはならない。アズサちゃんが熱心に取り組んでいたのはダイエットと男女交際くらいだと思う。見た目も気持ちも弱弱しいままで、常に男性に依存していた。それは「守られるヒロイン」像だ。
本当に困った時助けてくれる人
何が良くて何が悪かったのかはわからない。僕は警察官にこそなれなかったが、民間の警備会社に就職して「守るヒーロー」としての自負を満たせる仕事に就いている。一方のアズサちゃんは、次から次へと自分を守ってくれる男を渡り歩き、数年前から音信は途絶えている。守ってくれる人を求めて婚活にでも励んでいるのだろう、と考えていた。
しかし、今現在、アズサちゃんとの交流は復活している。連絡をしてきたのは彼女の方からだった。
「今月ピンチなの、助けて」
アズサちゃんにとって僕は「ピンチの時に助けてくれる人」になった。しかし、果たしてそれは幼少のころからの願望を叶えたことになるのかな?と彼女の指定した口座にお金を振り込みながら思った。
せめて、援助するお礼に一発くらいやらせてくれないか?と誘ってみたが「ヒーローがそんなことするの?」と軽くかわされた。
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